ヒンジ式チップコンベアの選び方|適否の見極めと失敗しない選定を専門メーカーが解説

2026年8月6日

「ヒンジ式チップコンベアを導入したいが、自社の切粉に本当に合うのか判断できない」
「今使っているヒンジ式で、最近詰まりや絡まり・停止が増えてきた」
「他タイプと比べて、ヒンジ式を選んでいいのか迷っている」

——本記事は、ヒンジ式チップコンベアの導入・入れ替えを検討している生産技術・設備担当の方に向けたガイドです。ヒンジ式の仕組みから、「自社の切粉・現場にヒンジ式が合うかの見極め方」「失敗しない選び方とスペックの決め方」までを、切粉処理装置の専門メーカーであるモアテック株式会社が30年以上の現場知見をもとに解説します。

(※「そもそもどのタイプが自社に合うか」から検討したい方は、まずチップコンベアの選び方ガイドで全タイプを比較するのがおすすめです。)

工作機械下に設置されたチップコンベア(切粉処理装置)の例
切粉処理の中核設備であるチップコンベア。なかでもヒンジ式は最も汎用性が高い

1. チップコンベアと切粉処理 ─ ヒンジ式の位置づけ

工作機械(マシニングセンタ・NC旋盤・フライス盤など)で金属を切削加工すると、必ず「切粉(切屑)」が発生します。この切粉を効率よく機外へ排出し、加工エリアを清浄に保つための装置がチップコンベアです。

切粉処理(切屑処理)が不十分だと、以下のようなトラブルが発生します。

こうしたリスクを抑え、生産性と安全性を両立するために、適切なチップコンベアの選定が欠かせません。チップコンベアには主に4タイプ(ヒンジ式・カキアゲ式・スクリュー式・マグネット式)がありますが、その中でヒンジ式は最も汎用性が高く、業界全体で広く採用されています。

2. ヒンジ式チップコンベアとは?

ヒンジ式チップコンベアは、「ヒンジ(蝶番)」で連結された金属プレートをキャタピラ状に循環させ、切粉を機外へ搬出する装置です。

工作機械の真下に設置され、加工時に発生した切粉がコンベア上に落下すると、循環するプレートに乗って自動的に排出口まで運ばれます。回収された切粉はリサイクル業者へ売却されるなど、産業廃棄物としてだけでなく資源として再利用されます。

ヒンジ式は「フロアタイプ」とも呼ばれ、長尺な切粉やカール状の切粉、チップ状の切粉まで幅広く対応できる点が大きな特長です。マシニングセンタやNC旋盤など多くの工作機械で採用されており、製造業の切粉処理の基幹設備として確立されています。

ヒンジ式チップコンベア|モアテック製品例
モアテックのヒンジ式チップコンベア(MMCH型)

3. ヒンジ式の構造と仕組み

ヒンジ式チップコンベアの主要な各部の名称と役割は、以下の通りです(本章末の構造図と対応しています)。

部品 役割
投入口 機械などから排出された切粉を受け入れる開口部(飛散防止ガイド付き)
ヒンジプレート 切粉を載せて排出口まで搬送する連結金属プレート
駆動モーター プレートを循環させる動力源(コンベア上部に配置)
落とし口 搬送した切粉を回収容器へ排出する出口
テール コンベア末端部。ふた状でメンテナンスが容易
近接スイッチ コンベアの動きを検知・制御する安全装置
開閉扉 点検・メンテナンス用の扉(アクリル板で点検窓にも対応)

動作の仕組みはシンプルです。モーターがチェーンを駆動し、チェーンに固定されたヒンジプレートがキャタピラのように循環します。プレート上に落ちた切粉は、傾斜したコンベア面に沿って上方の排出口まで運ばれ、最終的に回収容器へ落下します。

同時に、切粉に付着していた切削油(クーラント)は、コンベア底部のタンクに分離・回収され、再利用が可能です。これによりクーラントのロスを抑え、ランニングコスト削減にもつながります。

ヒンジ式チップコンベアの構造図|キャタピラ状のヒンジプレートで切粉を搬送
ヒンジ式の基本構造図。連結プレートが循環して切粉を排出口まで運ぶ

4. ヒンジ式チップコンベアの3つのメリット

ヒンジ式が多くの現場で選ばれている理由は、以下の3点に集約されます。

4-1. 幅広い切粉形状に対応できる汎用性

ヒンジ式の最大の強みは、長尺な巻き状切粉から短尺なチップ状切粉まで対応できる点です。鋼材・ステンレス・アルミなど、加工材質を選ばず使えるため、多品種少量生産の現場で重宝されます。

4-2. メンテナンス性の高さと長寿命

構造がシンプルなため、定期点検や部品交換が容易です。チェーンの張り調整やプレートの清掃も比較的簡単に行えます。適切なメンテナンスを行えば、使用環境により3〜10年程度の稼働が見込めます。

4-3. 導入実績の豊富さによる信頼性

多くの工作機械と組み合わせて採用されてきた歴史が長く、設計・製造ノウハウが業界全体で蓄積されています。トラブル発生時の対処法も確立されており、安心して導入できる選択肢といえます。

5. デメリットと注意点

万能に見えるヒンジ式ですが、不得意な領域もあります。

これらの弱点を補うため、他タイプとの組み合わせ(例:マグネット式と併用、ろ過装置を追加)で運用するケースもあります。

6. 適用される切粉の種類

ヒンジ式チップコンベアが得意とする切粉は以下の通りです。

適用度 切粉形状 例
◎ 最適 チップ状(5〜30mm) マシニングセンタでの一般的な切削加工
◎ 最適 カール状(巻き状) 鋼材・ステンレスのフライス加工
○ 対応可 短尺切粉(1〜5mm) 仕上げ加工で発生する細かい切粉
△ 条件次第 長尺切粉(50mm以上) 旋削加工。絡まり対策が必要
× 不向き 粉状切粉(1mm未満) 鋳鉄の研削、アルミの微細加工

判断に迷う場合は、現場の切粉を実際に確認した上で、メーカーへ相談することをおすすめします。

7. 他タイプ(カキアゲ式・スクリュー式・マグネット式)との比較

ヒンジ式が本当に自社に合うか、他タイプと比べて確認しておきましょう。主要4タイプを現場の選定基準で比較すると、以下のようになります。

項目 ヒンジ式 カキアゲ式 スクリュー式 マグネット式
適した切粉 チップ状・カール状 粉状・微細 短尺・粉状 鉄系の微細粉
搬送能力 ◎ ○ △ ○
設置スペース △ △ ◎ ○
メンテナンス性 ○ △ ◎ ○
汎用性 ◎ ○ △ △
クーラント分離 ○ ◎ ○ ◎

選定の目安

実際の現場では複数タイプを組み合わせる「ハイブリッド方式」が採用されることもあります。

現場別の判断例(自社を当てはめてみてください)

各タイプの製品ラインアップはチップコンベア製品一覧をご覧ください。

8. ヒンジ式選定時の5つのチェックポイント

ヒンジ式チップコンベアを選定する際は、以下の5項目を必ず確認してください。

8-1. 切粉発生量と必要な搬送能力

選定の出発点は、時間あたりの切粉発生量を把握し、それを上回る搬送能力の機種を選ぶことです。

発生量の掴み方:もっとも確実なのは実測です。工作機械を一定時間(例:1時間)稼働させ、出た切粉を回収して重量(kg/h)または体積(L/h)で測ります。集中コンベアで複数台をまとめる場合は、各機のピーク発生量を合算します。この必要量に対して安全率1.5〜2倍を見込んだ機種を選定します。

なお、コンベア側の搬送能力は機幅・搬送速度・傾斜角度で決まります(実値は機種ごとの仕様で確認)。また、カール状の長い切粉はかさ(体積)を多く占めるため、同じ重量でも必要な搬送能力が大きくなります。重量だけでなく「かさ」も考慮してください。

8-2. 切粉の形状・材質

前述の通り、ヒンジ式は粉状切粉が苦手です。加工材質と切削条件から発生する切粉形状を予測し、本当にヒンジ式が最適か検討します。

8-3. 設置スペース(幅・高さ・長さ)

工作機械の下部に設置する場合、機械側の構造によって設置可能な寸法が決まります。幅・高さ・コンベア長さを正確に測定し、メーカーへ伝えます。

8-4. 排出口の位置と高さ

切粉を受ける容器の位置・高さに合わせて、コンベアの傾斜角度と排出口の高さを決めます。傾斜角度の調整範囲は機種により異なります(モアテックの標準は0〜70度・標準設置角50度)。

8-5. 電源仕様・制御系の接続

工場の電源仕様(単相/三相、電圧、周波数)に対応したモーターを選定します。また、工作機械の制御系(PLC)と連動させる場合は、信号インターフェースの仕様を事前に確認します。

ここまでの5項目を整理してお伝えいただければ、当社が御社の現場に最適な機種・仕様を選定してご提案します。
まずはお気軽にお問い合わせください。

9. チップコンベアメーカーの選び方

ヒンジ式チップコンベアの搬送の基本的な仕組みは各社で大きく変わりませんが、長期的な運用品質には差が出ます。チップコンベアメーカーを選ぶ際は、以下の5つの観点で比較することをおすすめします。

9-1. 専門性と実績年数

切粉処理装置を専門とするメーカーは、現場対応力・カスタマイズ対応力に強みがあります。創業からの実績年数も、技術蓄積の目安になります。

9-2. 設計から保守までの一貫対応

設計・製造・据付・保守を一貫対応できるメーカーは、トラブル時の対応速度が圧倒的に早いです。外注比率の高いメーカーは、緊急対応で時間がかかるケースがあります。

9-3. カスタマイズ対応力

工作機械の仕様や設置環境は現場ごとに異なります。標準品ベースで柔軟にカスタマイズできるメーカーを選ぶと、長期的な使い勝手が大きく変わります。

9-4. 部品供給体制

長期運用を見据えると、消耗部品の供給体制が重要です。製造中止後も部品供給を続けるメーカーかどうか、事前に確認しておくと安心です。

9-5. 据付・現場サポート

自社の技術者が直接据付・調整を行うメーカーは、初期トラブルを最小限に抑えられます。販売代理店任せのメーカーは、現場での微調整に時間がかかるケースがあります。

10. モアテック製ヒンジ式チップコンベアの特徴

モアテック株式会社は、1992年創業のチップコンベア専門メーカーです。設計から製造、搬送・据付、保守点検まで自社一貫体制で対応しています。

機種ラインアップ

機種 幅
MMCH300 300mm
MMCH400 400mm
MMCH500 500mm
MMCH600 600mm
MMCH700 700mm
MMCH1100 1100mm
MMCH1300 1300mm

上記7機種に加え、特殊幅のオーダーメイド対応も可能です。各機種の詳細はヒンジ式チップコンベアの製品ページでご確認いただけます。

主要仕様

モアテックの強み

詳しい仕様やお見積もりは、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

11. よくあるトラブルと予防メンテナンス

ヒンジ式チップコンベアの現場で実際に発生するトラブルは、ある程度パターン化されています。代表的な4つのトラブルと、それぞれの兆候・原因・対策を整理しました。なお、本章の数値・交換基準は一般的な目安です。実際の判断は各機種の仕様やメーカーの指定に従ってください。

11-1. チェーンの伸びと「乗り上げ」

もっとも多いのがチェーンの伸びです。長年使い続けるとピンやブッシュが摩耗し、チェーン全体が少しずつ伸びてきます。伸びが進むとスプロケットに正しくかみ合わず、歯の上にチェーンが乗り上げてしまう「乗り上げ」現象が起き、最悪の場合はチェーン断裂に至ります。

交換の目安は、一般にピッチ伸びが基準寸法の1.5〜2%(低速・重荷重のコンベアでは2〜3%程度まで許容されることもあります)とされます。実際の交換基準はチェーン・スプロケットの仕様やメーカーの指定に従ってください。判定は、ノギスで5〜10リンク分の長さを計測し、新品時との差を確認します。

軽度の伸びであれば、ギヤードモーターの位置を下げて駆動チェーンに余裕を持たせ、テンションボルトを交互に少しずつ回して張り直すことで対応可能です。

11-2. 長尺切粉の巻きつき・絡まり

ステンレスや鋼材の旋削加工で発生する数メートル単位の連続切粉は、ヒンジプレートやチェーン部に絡みやすく、コンベア停止やワーク表面の傷の原因になります。

対策の優先順位は以下の通りです。

11-3. アルミ切粉のクーラント浮遊

アルミ加工で意外と多いトラブルが「切粉が軽すぎてクーラントに浮いてしまい、ヒンジ式で回収できずタンクへ流入する」というケースです。タンク内に堆積したアルミ切粉は、クーラントポンプの目詰まりやクーラント寿命の短縮を引き起こします。

対策としては、フィルタ付き仕様への変更、サイクロンフィルタなど2次濾過の追加、切削条件の調整による切粉サイズの最適化などが有効です。鋳物(FC材)加工でも同様の微細切粉問題があり、マグネット式と組み合わせた回収方式が採用されることもあります。

11-4. コンベア底面の摩耗・構成部品の脱落

長期使用で見落とされやすいのが、ヒンジプレートと内部ガイドレールの摩耗です。摩耗が進むと底面のクリアランスが変わり、プレートが擦れて新たな抵抗を生みます。さらに、ピンを留めるワッシャーの脱落や、ピン自体の変形も同様の症状を引き起こします。

これらは外観からは見つけにくいため、年に1回の分解清掃のタイミングで内部を確認することをおすすめします。

予防メンテナンスのチェックリスト

頻度 点検項目
毎日 異音・振動・搬送状況の目視確認
週1回 チェーンテンション・駆動部潤滑・クーラントタンク内の堆積
月1回 摩耗部品の状態確認・電流値モニタ
年1回 分解清掃・チェーンピッチ計測・ガイドレール摩耗確認

適切な予防メンテナンスを行えば、ヒンジ式チップコンベアの寿命は使用環境により3〜10年程度が目安となります。突発的な機械停止は生産損失に直結するため、計画的な保全を実施しましょう。

12. まとめ:ヒンジ式チップコンベアで切粉処理を最適化

ヒンジ式チップコンベアは、汎用性・メンテナンス性・信頼性のバランスに優れたチップコンベアの主流タイプです。

選定時のチェックリスト

切粉処理は、現場の生産性と安全性を左右する重要な要素です。ヒンジ式チップコンベアの導入や、既存設備の更新をご検討中の方は、ぜひ専門メーカーへご相談ください。

モアテック株式会社では、30年以上の実績と自社一貫体制で、お客様の現場に最適なチップコンベアをご提案いたします。お見積もり・ご相談はお問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。